内部統制制度の概要

1.内部統制制度に係る法令体系

内部統制制度は、下図のように「金融商品取引法(第24条の4の4)」を根拠条文とし、有価証券報告書提出会社に対して、経営者に対する内部統制報告書の提出及び財務諸表監査を行う同一監査人の内部統制監査を義務付けるものと、「会社法(第348条、同第362条、第416条)」を根拠条文とし、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保することを目的として体制整備を求めるものの、二系統の法令により、制度構築が規定されております。

2.内部統制報告書(第一号様式)の記載内容

内部統制報告書(第一号様式)は、年1回の決算期日を基準日として作成を行い、「代表者(注)が自署し、かつ、自己の印を押印」して、財務局長に提出しなければなりません(実務的には、EDNETに掲載)。記載内容は以下のとおりとなります。

1【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項】
  • 代表者及び最高財務責任者(会社が、財務報告に関し、代表者に準ずる責任を有する者として、最高財務責任者を定めている場合に限る。)が、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の責任を有している旨
  • 財務報告に係る内部統制を整備及び運用する際に準拠した基準の名称
  • 財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある旨
2【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】
  • 財務報告に係る内部統制の評価が行われた基準日
  • 財務報告に係る内部統制の評価に当たり、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した旨
  • 財務報告に係る内部統制の評価手続の概要
  • 財務報告に係る内部統制の評価の範囲
    財務報告に係る内部統制の評価範囲及び当該評価範囲を決定した手順、方法等を簡潔に記載する。なお、やむを得ない事情により、財務報告に係る内部統制の一部の範囲について十分な評価手続が実施できなかった場合には、その範囲及びその理由を記載する。
3【評価結果に関する事項】
  • 財務報告に係る内部統制は有効である旨
  • 評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である旨並びに実施できなかった評価手続及びその理由
  • 重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨並びにその重要な欠陥の内容及びそれが期末日までに是正されなかった理由
  • 重要な評価手続が実施できなかったため、財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できない旨並びに実施できなかった評価手続及びその理由
4【付記事項】
  • 財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象決算日以降、内部統制報告書の提出日までに、財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす事象が発生した場合には、当該事象を記載する。
  • 事業年度の末日後に重要な欠陥を是正するために実施された措置がある場合には、その内容
    事業年度の末日において、重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制が有効でないと判断した場合において、事業年度の末日後内部統制報告書の提出日までに、記載した重要な欠陥を是正するために実施された措置がある場合には、その内容を記載する。
5【特記事項】(10)
  • 財務報告に係る内部統制の評価について特記すべき事項がある場合には、その旨及び内容を記載する。

3.内部統制制度の構築手続

内部統制制度の構築手続は、概ね以下のようになります。具体的な制度構築手順、内部統制範囲の設定、評価項目、評価手続等につきましては、監査法人のご意見を確認しながら、構築を行う必要があります。

内部統制プロジェクトの発足

内部統制制度は、経理財務部門を中心に概ね全部門及び企業グループ全体が対象となりますので、全部門によるプロジェクトの立ち上げが必要です。

内部統制範囲案の設定

内部統制プロジェクトの事務局が中心となって、内部統制範囲の設定を行います。評価範囲の後々の変更はスケジュールに大きな影響を与える可能性がありますので、十分に検討を行います。

内部統制計画の立案

内部統制プロジェクトの事務局が中心となって、内部統制方針、内部統制範囲、主要整備項目、評価手続、整備スケジュール、ITへの投資額等について取りまとめた計画書を立案します。計画書は、取締役会での承認を行います。

具体的な整備・改善の実施

プロジェクトのメンバーは、内部統制方針・計画に基づいて、それぞれの業務における業務記述書、フローチャート、リスクコントロール(RCM)等の整備を行います。主要な評価項目、評価基準を念頭にして実施することが効果的です。

中間評価の実施

決算期日において、初めて内部統制制度の評価を行った場合は、想定していなかった「重要な不備」が発見される可能性があるため、整備の過程においても中間評価を実施して整備状況の確認、未改善事項の把握を行う必要があります。

内部統制評価の実施

決算期日以降に、内部統制評価を実施します。(実務的には期中も実施)内部統制プロジェクトの事務局が中心となって実施します。評価の段階で行ったチェックシートや帳票、資料、マニュアル等は、後日、監査人の内部統制監査において使用しますので、収集、整備、保管、取りまとめておきます。

内部統制報告書案の作成

内部統制プロジェクトの事務局が中心となって内部統制報告書を作成し、代表者(及び最高財務責任者)へ報告し、確認を受けます。代表者は、評価結果を詳細に確認します。

内部統制監査の実施

監査人の監査に対して、内部統制プロジェクトのメンバーを中心に実務面での対応を行います。監査人は、代表者に内部統制制度の構築状況及び評価について確認を行い、監査結果を説明します。

内部統制報告書の提出

経営者は、監査人の監査報告書を受領後、内部統制報告書に代表者(注)が自署し、かつ、自己の印を押印」して、財務局長に提出します(実務的には、EDNETに掲載)。

内部統制報告書の提出状況と今後の検討事項について(2009.7.16 追記)

1.平成21年3月期決算会社の内部統制監査結果

【(1)概況】

平成21年7月7日付けで金融庁から、「平成21年3月決算会社に係る内部統制報告書の提出状況について」が公表され、平成21年3月決算の会社に係る内部統制報告書の提出状況について報告がなされました。
 内部統制報告書提出会社数(任意提出会社数を含む)は、2,670社で、そのうち、「内部統制が有効でない(56社)」、あるいは「意見不表明(9社)」とされた会社が65社(2.4%)となっています。

また、「重大な欠陥があり、内部統制は有効でない。」とされた56社の内部統制監査報告書における監査人の意見は、55社が無限定適正意見、1社が意見不表明でした。
 更に、56社の財務諸表に対する監査報告書の監査意見は、54社が無限定適正意見、1社が限定付適正意見、1社が意見不表明となっています。

(金融庁 HP)
平成21年3月決算会社に係る内部統制報告書の提出状況について

【(2)内部統制監査と財務諸表監査との監査意見の関連性】

内部統制報告と内部統制監査及び財務諸表監査との関係は、下記のパターンとなっており、内部統制監査の「意見不表明」が即座に財務諸表監査の「意見不表明」には直結していないようです。

  内部統制報告書 内部統制監査(報告書) 財務諸表監査(報告書)
A 有効 適正意見 無限定適正意見
B 非有効(重要な欠陥有) 適正意見 無限定適正意見or限定付適正意見
C 非有効(重要な欠陥有) 意見不表明 無限定適正意見
D 意見不表明 意見不表明 (無限定)適正意見or意見不表明(2社)

上記の結果から判断すると、同一監査人が内部統制監査と財務諸表監査を行っていますが、内部統制監査と財務諸表監査は、切り離されて考えられているように思われます。

【(3)「重要な欠陥」の判定について】

今回の内部統制監査の「有効・非有効(重要な欠陥有)」の判断において、大きな特徴が見られたのではないかと思われます。
 これまで、決算実務においては、会社が決算手続を実施し、その後、決算短信の公表スケジュールに合わせて、監査法人の先生方の監査を受け、その過程において、手続や集計のミス等の指摘を受けた場合は、修正して公表する場合が一般的であったと思います。
 先の内部統制報告書の評価結果を見ますと、財務諸表監査の過程において、当該ミスの指摘を受けた場合に「重要な欠陥」との判断を受けた事例が多く見られます(当然、そのミスが質的重要性と金額的重要性(実施基準では、「連結税引前利益の概ね5%」)の基準に抵触していると思われます)。

これらの事例から判断すれば、決算実務において、経理部門の拡充や正確性及び実務に関する習熟性を高めておく必要があります。特に、会計基準の変更等がなされた場合は、決算開始以前の期中において、決算手続に関し、十分な理解と手順の確認、チェック体制の構築を行っておく必要があります。前年度の評価結果が「有効」であったとしても気が抜けないことになります。

3.開示手続の検討事項

平成21年3月期決算は、内部統制制度導入の初年度ということで、開示のタイミングが定まっていなかったと思われますが、決算短信公表時点では、西松建設(株)が「会社の対処すべき課題」において内部統制に関し、具体的に記載をしていました。

内部統制監査は、今回、実務的には財務諸表監査を先に行い、決算短信の公表後に実施された事例が多かったと推測されます。また、実際、内部統制に関する監査人の意見不表明等のお知らせも内部統制報告書の提出と同時の場合が多く見られました。
 内部統制監査報告書における「意見不表明のお知らせ」は全て開示されておりますが、「重要な欠陥」については、任意であるとは思いますが、開示の可否についてはまだ定まっていないように思われます。

「適時開示」の趣旨からすれば、今後は、内部統制監査終了と同時に、意見不表明の場合は開示する必要があると思われます。ただし、「重要な欠陥」については、期末時点で「非有効」であっても、内部統制報告書提出日までに改善できていれば「有効」と判断される場合もあるため、確認されるまでは開示できない状況が発生することになります。

今回、内部統制報告書の評価結果は、「株価」に直接は影響を与えなかったように思われますが、今後は、投資家(特に機関投資家)がどのような対応を見せるのか注目する必要があります。